chapter 6
flowの価値と
stockの価値

flowとstockは主に経済学で使われる用語である。企業の決算ではflowは単年度の収支、stockはその時点までの財産の蓄積状況を表す用語として使われる。
flowは短期の成果に基づくものであり、stockは長期の成果を表している。
Kahnenmanの幸福論では、flowは自己の利益や喜びを基本とする利己的幸福であり、stockは他人や社会と共有する利他的な幸福と言えそうだ。
このように考えるとflowとstockは相反する概念のように思えるが、富と幸福の関係がそうであるように、両者には強い関係性がある。単年度の売り上げが不振であれば、蓄積は生まれない。個人が不幸であれば、家族の幸福感も育たない。
flowとstockは互いに関係しながら、循環している。

写真 福岡市営地下鉄七隈線のユニバーサルデザイン

chapter 7
flowのデザインと
stockのデザイン

デザインは社会を改善するという思想をもって誕生した。個人の利益ではなく、1企業の利益でもない、利他の志がデザインを育てた。そして資本主義経済の中で変化し、進化したデザインは今、flowとstockの二つの力を獲得している。
魅力的な商品をつくり、売り上げを伸ばし、企業利益を拡大するflowの能力と、社会の仕組みを変え、持続的な幸福価値を実現するstockの能力である。
私もそうであるが、大半のデザイナーは企業にデザインを提供し、flowの能力で生計を立てている。長期の視野で価値を蓄積するstockのデザインは、利益を予測しにくく、企業は二の足を踏む。
高齢者をはじめに多様な人々の暮らしをサポートするユニバーサルデザインや、自然エネルギー開発のためのデザインは、企業のコスト管理の前で息も絶え絶えの状態である。
それでもデザインは前に進まなければならない。
私たちのまわりには高齢化やエネルギーだけではなく、貧困や格差など、解決をせまられる課題が山積しており、デザインは社会の改善という運命のDNAを持っているのだから。

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